バリ島にもある椰子の木は南国を代表する木です。
30mにもならんとする直立した幹、横に拡がった独特の羽丈葉、角張ったラクビーボールのような果実。
誰もが知っている南国の風物詩です。
夕焼けに浮かぶココヤシ 4月 バリ ウブド郊外
民家やビラの中庭、渓谷沿い、田圃沿い、丘陵地、山地、海岸沿いなど、
バリ島では海岸から山地にいたるまで、どこでも椰子の木が目につきます。
ココヤシ林とアグン山遠景 12月 バリ ウブド郊外
バリに滞在していれば、民家やビラ(ホテル)の中庭などに、オレンジ色を帯びた黄色の大きなヤシの実が、たわわに実っている姿を誰もが目にします。
たわわに実るイエロウココナッツ 4月 バリ ウブド郊外
バリでは田園地帯に林立するヤシと、民家やビラの庭にあるヤシは、同じココヤシ(ココナッツヤシ)ですが、種類が違います。
田園地帯や山、海岸などに林立するヤシは、果実の皮の色がくすんだ緑色であり、民間の庭や畑などで栽培されるヤシは、果実の皮の色がオレンジがかった黄色です。
果実はどちらもココナッツと呼ばれます。
前者は、いわゆる一般にヤシといわれているココヤシ(ココナッツヤシ)であり、
オレンジ色を帯びた黄色い実をつけたヤシはキングココヤシといわれる品種で、地元ではイェロウココナッツと呼ばれています。
バリ語ではニュウ・クニンといいます。
ニュウはココナッツヤシ、クニンは黄色を意味します。
ウブド郊外のニュウ・クニン村は黄色い実をつけたココナッツヤシが多い村を意味している地名です。
この黄色いキングココナッツは一般のココナッツ(ココヤシの果実)と較べると、風味がよく、実つきもよいため、一般の民家などで、盛んに栽培されるています。
棚田とココナッツヤシ 4月 バリ テガララン
バリ島の風景に溶け込んでいる椰子の木は、バリでは生活に欠かせない大切な木です。
果実も葉も幹は、生活に必要なさまざまなものに利用されます。
果実からは、ココナッツジュース、ココナッツミルク、ココナッツオイル、マーガリン、バリ料理の各種材料、アラックなどのヤシ酒、油脂からは石けん、洗剤。
ココナッツの実にストローをさし込んで飲む、ほのかに甘い自然のままの、ココナッツドリンク(ジュース)は、南国の真夏の太陽の下で味わう爽やかなドリンクで、これもバリの風物詩といえるでしょう。
またココナッツヤシの花蜜からは砂糖「ハニーココナッツ」が作られます。
インドネシアでは、この砂糖「ハニーココナッツ」の販売による収益金の一部は、インドネシアのNGOによる「ハニココ奨学金」として、子供達の奨学金の調達の一助にもなっています。
一般的には、ヤシの砂糖はサトウヤシの樹液を煮詰めて作るものが多いようです。
そして果実の皮の殻は、燃料や、サテ(バリの焼き鳥)を焼く炭に使われたり、
丈夫な繊維としてロープやマットやマットレスの材料などに使われ、用途は広い。
葉は屋根を葺いたり、箒を作ったり、籠を編んだりする材料として使われます。
このようにヤシは、南国では衣食住全てをおぎなう生活の糧、命の源ともいえる、素晴らしい植物です。
ヤシの仲間繁る 12月 バリ ウブド郊外
世界でヤシの木の仲間は熱帯、亜熱帯を中心に2500種を越える種類があるといわれます。樹枝、木のサイズ、実の形・大きさ、葉の形など様々です。
バリ島でもさまざまな種のヤシの木がありますが、代表的なのはココヤシ(ココナッツヤシ)、ココヤシの品種のキングココヤシ(キングココナッツヤシ)、パームヤシ、ロンタルヤシなどです。
ココナッツヤシの果実 4月 バリ ウブド郊外
ココヤシは南太平洋の熱帯諸島が原産地といわれ、海岸、内陸地どこでも生育し、樹高は30mに達します。
葉は羽丈葉で長さ5mにもなります。果実はやや先が尖った楕円形で、大きさは約20〜30cm。
外果皮の色はくすんだ緑色です。
花は、雌雄同種の大きな円錐状の花序で、先端部に雄花が付き、基部に雌花が付きます。
果実が黄色のキングココヤシはイェロウココナッツと呼ばれ、ココヤシの品種として幅広く栽培されています。
イェロウココナッツ 4月 バリ ウブド郊外
パームヤシはアブラヤシといわれるものでパーム油を採取するヤシの木として有名です。
マレーシアを中心に大規模なプランテーション栽培が行われています。
最近はパーム油、食用油以外にバイオディーゼル燃料の用途が注目されているようです。
しかしマレーシアのパームヤシのプランテーション造成は、広大な熱帯雨林の破壊、大量の農薬や化学肥料使用による土地の汚染、現地の住民との摩擦や、不当労働の問題など様々な環境問題や労働問題などを引き起こしているのは周知の通りです。
「環境に優しい」素材として謳われているヤシの木も、裏では環境破壊という大きな問題をはらんでいるわけです。
ロンタルヤシと寺院 4月 バリ タマンアユン寺院
ロンタルヤシはバリ島では乾燥の激しい中央山地北面の落葉樹林帯に多く自生しています。
果実は直径18cm程になり、バリの北東地区ではトゥアックtuakと呼ばれるアルコール飲料が造られます。他の地区のトゥアックはココヤシから造られます。またサトウヤシと同様に砂糖もつくられます。
かつて紙が普及しない頃、ロンタルヤシの葉を乾燥させて、文字を刻み込んで作られた「ロンタル本」は大変歴史的に貴重なもので、観光地などではイミテーションが作られ、売られたりしているようです。
ジャワやバリの古文化の記録はこのロンタルにより伝承されてきたといわれます。
ちなみに、このロンタルという言葉はジャワ語で「言葉を書く葉」という意味の言葉です。
またこのロンタルヤシの葉はバリのガルンガン(日本の迎え盆のあたる)のお供えの飾り物ペンジョールに使われます。
ガルンガンの祭りとペンジョール 11月 バリウブド郊外